展示構成


「私たちは、それぞれの旗を掲げる。」
冒頭、3人による共同制作の様相を呈する立体作品がいきなり登場する。
とはいえ本作は純然たる共同作品ではない。「あなたなら自分自身が掲げる旗として、どんな旗を選びますか」という、三者三様のいわば「私」宣言の場である。
それぞれの旗の種類は異なっている。ではその行く先は?目指す行き先が、これから5つの「驚異の部屋」で示されることになる。

観客は見知らぬ都市の散歩者
展示室は、「Room1 :博覧会は子供の領分(ヤノベケンジ)」、「Room2 :広場にパノラマ絵画奇譚(森村泰昌)」、「Room3:坂道のオード(賛歌)(やなぎみわ)」、「Room4 :迷宮を紡ぐ厳粛な綱渡り」と続く。「博覧会」「広場」「坂道」「迷宮」と、観客は見知らぬ都市空間のような展示室を散歩者として巡り歩く。
それぞれの「Room」は、いずれもが美術館展示からの逸脱の様相を呈し、いわば踏み外された美術館としての「驚異の部屋」となっている。

絶望するな。では、失敬。
展覧会の内容を決めていくうえで、当初は想定されていなかった「消滅美術館」という発想が組み込まれて、Room5が最後を締めくくる空間となった。
本展Room1 からRoom4 までの展示は、物量、サイズ、重量などにおいて、過剰で饒舌で重い磁場となっている。
Room5 ではその磁場が一気にホワイトアウトしたかのような、「消滅」性に反転する。
展示詳細

本展覧会は超高速の彫刻、自己像の造形、旗の彫刻が同時に立ち現れる場面から始まります。3人の表現が衝突する導入部となります。

森村泰昌 ヤノベケンジ やなぎみわ
《私たちは、それぞれに旗を掲げる。》(ラフスケッチ) 2026 年
.png)
第1室はヤノベケンジによる「博覧会は子供の領分」。大阪万博跡地での原体験を起点に、新旧作品が驚異の部屋のように集積されます。未来の作家と作品が時空を横断し、子供の想像力を解き放つ創造のエネルギーを体感できる、博覧会的想像力に触れていただきます。
.png)
ヤノベケンジ
《The Spaceship of SHIP'S CAT》2025年
撮影:Omote Nobutada ピクセルアート:BAN8KU / the PIXEL
.png)
ヤノベケンジ
《稲妻絵画》(イメージ図) 2026 年
*ヤノベケンジ《稲妻絵画》は1⽇に2回(11:00~ 、16:00~ )、テスラコイルによる電気が流れる作品をご鑑賞いただけます。
*電気が流れる時間は約20秒です。電気が流れる際、大きな音が鳴るためご注意ください。
*ペースメーカーを装着されている方は、《稲妻絵画》が作動している際は作品から離れてご鑑賞ください。

第3室では、やなぎみわによる「黄泉平坂」の世界を紹介します。福島の桃果樹園を、毎夏10年間撮影した写真作品「女神と男神が桃の樹の下で別れる」、火、土、鐵、水などを産んだ女神をテーマにした鋳造作品、新作映像のほかに、5月28日29日30日には、舞台公演「黄泉平坂〜排斥と遊戯〜」も上演予定です。
古事記を新訳する作家の表現に触れてください。
.png)
やなぎみわ
《Juggling with Peaches Ⅰ》2024 年
撮影:守屋友樹
.png)
やなぎみわ
《「女神と男神が桃の木の下で別れる」川 中島 II》2016年

4室では3人の作家が再び集結。各作家がいま最も関心のある内容から制作された、最新作を紹介します。

森村泰昌
《境界線上の舟遊び(「浄瑠璃船」のために)》習作(参考作品) 2026年
大阪の日本画家、木谷千種《浄瑠璃船》(1926年、大阪中之島美術館蔵)を原画に、森村流の新たなビジュアル世界に挑戦しま す。いわゆるVFX的な手法を選択せず、あえてかつての実写優先の「特撮」的な手法を用いることによって、「生身」としての「リアル」にこだわって制作。また本作は、森村の最近のテーマのひとつである「勇ましくない絵画」の第一弾として発表されます。

ヤノベケンジ
《八卦連環 火》 2024 – 2025年
撮影:表恒匡
新作《八卦連環》シリーズ全8本が、今回初めて一堂に揃います。
あわせて、刀匠・河内國平との協働による太刀作品《天地以順動》も展示されます。
《八卦連環》シリーズは、八卦から着想した8つのテーマを軸に、これまでのヤノべ作品を引用しながら、8つの世界を表現した装飾が短刀の拵(こしらえ)に施されています。

やなぎみわ
《アルゴー船の船首像 2》2019年
「アルゴーの船首」「ロストラ柱につけられた船首たち」
世界中に多く残された「女性の船首像」たちを撮影した写真シリーズ(2019年制作)と、新たに創作した船首像の写真(2026年制作)を、合わせて展示します。
「ロストラ柱」とは、古代ギリシャに始まる、敵の船から切り取った船首を飾る戦勝記念塔。
また「アルゴー船」の冒険譚は、英雄たちによる征服と、周辺諸国の植民地化が語られる最古の物語です。

本展までの2年間の記録から、映像作家の林勇気が「驚異」のドキュメンタリー映像を制作。エピローグとして上映します。

林勇気
《Frames》2026 年

本展の発起人である、森村泰昌氏のテキスト「「驚異の部屋の私たち、消滅せよ。」は、なぜこの3人なのか」を公開しています。
本テキストは本展を深堀した図録に掲載されない森村氏執筆のテキストです。テキストは大阪中之島美術館 noteにてぜひご覧ください。



.png)
.png)
.png)